外資系企業の日常「朝礼と3分間スピーチ」第2話

28歳で外資系企業に転職しました。現在38歳で約10年、今の会社で働いています。

働いている会社で朝礼・3分間スピーチが習慣化された話の続きです。

前回の記事はコチラ

朝礼の効果

 

朝礼の効果は比較的早くあらわれ始めました。

良かったことは、アメリカの親会社は「朝、ミーティングをしなさい」というざっくりとした指示は出しましたが、細かく具体的な指示までは出しませんでした。

なので、その部によってやりやすいようにミーティングの形は変わっていきました。

例えば私の所属する部では、当初は個々の予定を発表する時に「その日の帰宅予定時間」などもいうルールでしたが、これはあまり意味がなかったためなくなりました。

それぞれが発表する「その日の自分の仕事の内容」の細かさも人によってまちまちでしたが、だいたい「その場にいる皆がわかるくらいの内容を要約して喋る」程度のものに自然と統一されていきました。

同じ部のメンバーが毎朝、顔をあわせることで情報や問題は共有されやすくなりました。

さて、問題はミーティングの最後にある司会者の締めのスピーチです。

ネタが尽きたら新しいアイディアが出た

日めくりカレンダーのネタが尽きてきた頃、僕は試しにカレンダーの内容に触れずに最後の締めのスピーチをしてみました。

新聞の記事を一つ要約して喋り、仕事に関わるような教訓と結びつけてみました。

皆、「カレンダーはもういいよね」と思っていたようで、そのあとは「新聞の記事や本の内容を紹介し、仕事に関連づける教訓を言って閉める」という流れに変わりました。

しかし、これはあまりいい流れにはなりませんでした。

「最後に仕事の教訓に繋げなくてはいけない」ことが足かせとなり、皆、喋る内容が似通ってしまうのです。

それに仕事の教訓=ポジティブなことじゃないといけない、という意識がはたらき、よそよそしいスピーチが続きました。

仕事が忙しい時期は、前もって仕事の教訓になるようなネタを探さなくてはいけないことも負担になりました。

ハードルが下がった

そしてある日、「とても優秀なんだけど、天然で思っていることを言ってしまう」A先輩が司会者になった時についに言ってしまいます。

A先輩「えー、最後に締めの言葉ですが、今日はそんな暇ないのでスキップさせてください。」

その日は繁忙期で、無駄なことに時間を使うのはやめよう、ということです。

それまでも、大きなトラブルがあった時など、朝礼自体がなくなることはありましたが、朝礼はやるけどスピーチは辞退というケースは初めてでした。

「まー、確かにあんま意味ないしなぁ。」

誰もが心の中で納得しましたが、部長は違いました。

部長「いやいや、それはダメでしょ。スキップはなしね。」

この一言に皆、驚きました。なんとなくそう思ってはいたけど、

「最後のスピーチは絶対やんなくちゃいけないんだ!」という驚きと、

部長のことを、皆「とても優秀で、天然キャラなどのスキもなく、自分の私生活のこともほとんど喋らないクールで厳しい人」だと思っていたことからの驚きです。

そこまで締めのスピーチにこだわりがあるとは思っていませんでした。

実際、部長だけ司会者の出番はなく、当然スピーチもありませんでした。

「そりゃ、やらない人はいいよ」などと、反感の思いなども湧き上がってくる中、A先輩はしぶしぶスピーチを始めました。

グダグダでした。

どんな内容だったかも忘れてしまいましたが、

事前の準備なしで、仕事の教訓も何もない、その場で思いついたことを一生懸命しゃべるAさんはとても人間臭く、魅力的にみえました。

そして、それを一番楽しそうに聞いていたのは部長でした。

以降、朝礼の締めのスピーチはハードルが下がり、何を喋っても良い場となっていきました。

第3話に続きます。

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ippei

趣味でコントを楽しむサラリーマンを挫折。難航する婚活とリストラの恐怖と、両親の介護への不安。そんな時に父親が癌に。 日本で楽しく生きるとは? 答えを探すためにコーチングを学んで40歳からキャリアチェンジ。その道程で出会いがあり入籍。夢は、日本や世界の状況がさらに深刻になった時に困っている人達に「楽しい生き方」を共有できる人間になること。