「つまりこういうことでごわすか?」うすどはんがおもむろに口を開きました。
うすどん「にっくき猿が家に戻って来て体を暖めようとしたところを火鉢から飛び出た栗どんが体当たり。」
一同、うなづく。
うすどん「猿は火傷を負い水で冷やそうと水桶に近づくところを蜂どんがひと刺。慌てた猿が家から逃げようとするところを土間にいる馬のふんどんにすべり転倒。そこで屋根からおいどんが猿を押し潰す。」
一同、うなづく。
うすどん「完璧な算段でごわすね。よし、では早速支度にとりかかりましょう。」
僕「あの、ちょっといいですか?」
うすどん「ん、なにか気にかかることがあるんでごわすか?」
僕「あの、この計画僕も死にません?」
うすどん「はっはっはっ馬のふんどんは心配性でごわすな。ね、栗どん」
栗どん「そうですよ。大丈夫ですよ、馬のふんどん。」
僕「いやいやだって猿が馬のふんどんにすべり転倒って、僕その時点で猿に踏み潰されてますよね?しかもその上からうすどんが落ちてくるわけでしょ?」
栗どん「馬のうんどん」
蜂どん「馬のふんどん」
うすどん「馬のふんどん。さ、支度にとりかかりましょう」
僕「ごめんなさい!やっぱり僕参加できません。」
うすどん「いいでごわすか。あの猿はおいどん達の大切な仲間のカニどんに柿を投げつけてつぶしたんだ。同じ目にあって当然でしょう。」
僕「猿はね!猿は悪いことしましたもんね!」
うすどん「当然でごわす!罪もない生命をいたずらに弄ぶなんぞ、生き物の風上にもおけない行為でごわす。犬の糞にもおとるでごわす。」
僕「え?」
蜂どん「私達もね、本当は手荒なまねなんかしたくないです。だけどここはひとつ!心を鬼にして!馬のふんもろとも猿をやっつけようってことなんですよ!」
僕「・・・もろともっていいました今?」
蜂どん「いってません。」
栗どん「蜂どんは何もいってません。」
僕「いったでしょ完全に!」
うすどん「牛のふんどん」
僕「馬のふんどんです」
うすどん「馬のふんどん、何が引っかかっているんでごわすか?」
栗どん「そうですよ。この際洗いざらい吐き出してスッキリしましょうよ。」
それから僕たちは朝まで語りあいました。
悲惨な差別の歴史のことを。
中世ヨーロッパの魔女裁判のこと。黒人の奴隷制度のこと。
そしてナチスのこと。
僕たちは理解しあったかのように思えました。しかし翌日、何もなかったかのように計画は実行され、猿と僕は帰らぬ猿と馬のふんになりました・・・。
歴史は繰り返す。
この事件をそんな言葉で片付けてしまってよいのでしょうか?
僕たちはもう一度考え直す必要があるではないでしょうか?
本当の平等の意味を。
最後にこれだけは言っておきたい。
僕は馬のふん。
ふんの世界のサラブレッドです。犬のふんや牛のふんなんかとだけは一緒にしないで頂きたい。
それだけは言っておかないと死んでも死にきれません。
ippei
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